【医師が監修】NIPTの結果は遺伝カウンセリングでどう活かされますか?

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2026.05.23

胎児DNA鑑定

【医師が監修】NIPTの結果は遺伝カウンセリングでどう活かされますか?

【医師が監修】NIPTの結果は遺伝カウンセリングでどう活かされますか?

 

この記事の結論

NIPTの結果(高リスク・低リスク・判定不能)は、遺伝カウンセリングを通じて正確に解釈され、確定診断・妊娠継続・社会資源活用などの意思決定に活かされます。NIPTはスクリーニング検査であり確定診断ではないため、結果単独では次のステップを決定できず、専門家によるカウンセリングが不可欠です。

妊娠中にNIPT(新型出生前検査)を受ける妊婦が増加しています。NIPTは採血のみで胎児の染色体疾患リスクを調べられる非侵襲的な検査です。しかし「陽性でした」「陰性でした」という結果だけでは、次の行動を適切に決めることはできません。

NIPTの結果を意思決定に結びつけるプロセスを支えるのが、遺伝カウンセリングです。本記事では、NIPTの各結果が遺伝カウンセリングの場でどのように活かされるかを、医学的な根拠とともに解説します。

1. NIPTとは何か?スクリーニング検査の定義と精度

NIPT検査の概要・採血イメージ

NIPTはどのような検査か

NIPTとは、母体血中に浮遊する胎児由来の無細胞DNA(cell-free fetal DNA:cffDNA)を解析し、胎児の染色体数的異常リスクを推定するスクリーニング検査です。確定的な診断(確定診断)ではありません[1]。

日本では2013年より臨床研究として開始されました。現在は認定施設・連携施設において一般診療として実施されています[2]。

NIPTの検査精度(感度・特異度)

21トリソミー(ダウン症候群)・18トリソミー・13トリソミーの3疾患に対し、NIPTの感度・特異度はいずれも約99%と報告されています[1]。ただし、感度・特異度が高いことと、陽性結果が確定診断であることは別の概念です。

【重要定義】

陽性的中率(PPV)とは:「高リスク」と判定された人のうち、実際に疾患がある割合。PPVは母体年齢・疾患の有病率により大きく変動します。21トリソミーでは比較的高く、13トリソミーや性染色体異常では同じ高リスクでもPPVが低く偽陽性率が上がります[1][3]。

2. NIPTの3つの結果と遺伝カウンセリングでの活かし方

NIPTの3つの結果(高リスク・低リスク・判定不能)

NIPTの結果は「高リスク」「低リスク」「判定不能」の3種類です。下表に結果ごとの意味と遺伝カウンセリングの主な内容を整理します。

結果区分 意味 次のステップ 遺伝カウンセリングの主な内容
高リスク 染色体異常の可能性が高い(確定ではない) 羊水検査または絨毛検査を推奨 PPVの説明・確定診断の選択支援・心理サポート
低リスク 染色体異常の可能性が低い 通常の妊婦健診を継続 偽陰性の可能性・NIPTで検出できない疾患の説明
判定不能 cffDNA割合不足などにより判定できない 再検査または別の検査方法を検討 原因説明・代替検査の利益とリスクの提示

高リスク:確定診断に向けた意思決定支援

高リスクとは、「染色体異常の可能性が高い状態」を意味します。確定診断ではありません[4]。

遺伝カウンセリングでは次の3点を支援します。

  • 羊水検査・絨毛検査の特徴の説明(実施時期・手技・流産リスク・結果判明期間)
  • PPVの個別説明(母体年齢・疾患種別に基づく偽陽性の確率)
  • 確定診断後を見据えた疾患情報・利用可能な社会資源の提供

低リスク:安心と正確な理解の両立

低リスクとは、「染色体異常の可能性が低い状態」を意味します。陰性的中率(NPV)は99%超と非常に高水準ですが、「完全に正常」を保証するものではありません[1]。

遺伝カウンセリングでは「NIPTで検出できない疾患が存在すること」を説明し、その後の妊婦健診への適切な継続を促します。

判定不能:原因説明と代替検査の検討

判定不能とは、母体血中のcffDNA割合(胎児ゲノム率)が不足するなどの理由で、リスク判定ができなかった状態です。0.3〜3%の頻度で生じます[3]。

遺伝カウンセリングでは原因(肥満・週数不足など)を説明し、再検査・別のスクリーニング・確定診断への移行を個別に検討します。

3. 遺伝カウンセリングとは何か?役割と実施タイミング

遺伝カウンセリングを受ける妊婦と専門家

遺伝カウンセリングの定義

遺伝カウンセリングとは、遺伝に関する情報を専門家が個人・家族にわかりやすく伝え、本人が十分な情報に基づいた自律的な意思決定を行えるよう支援するプロセスです(日本遺伝カウンセリング学会定義)[4]。

「こうすべき」と方向性を決めるのではなく、当事者が自分の価値観・状況に沿った判断を下せるよう支援する非指示的アプローチが原則です。

実施タイミング:検査前・検査後の2段階

遺伝カウンセリングはNIPTの前後2段階で提供されます。

タイミング 対象 主な内容
検査前カウンセリング 全妊婦(希望者) NIPTの目的・精度・限界・判定不能の可能性・高リスク時の対応方針の確認
検査後カウンセリング 全妊婦(特に高リスク・判定不能) 結果の正確な解釈・確定診断の選択肢・疾患情報・社会資源・心理支援

日本産科婦人科学会の指針(2023年改訂)では、NIPT実施施設に対して適切な遺伝カウンセリング体制の整備を義務付けています[2]。

seeDNAのNIPTサポート体制について

seeDNA遺伝医療研究所は、高リスク(陽性)の結果が出た場合に確定診断のカウンセリング費用の補助を行うサポート体制を設けています。詳細は seeDNA NIPT検査ページ をご参照ください[5]。

4. よくある質問(FAQ)

Q1. NIPTが高リスクでも確定診断を受けない選択はできますか?

できます。確定診断を受けるかどうかは妊婦本人・家族の意思に委ねられます。遺伝カウンセリングでは、確定診断を受ける・受けないそれぞれの場合のリスクと利益を中立的に説明し、意思決定を支援します。

Q2. 遺伝カウンセリングは誰が行いますか?

認定遺伝カウンセラー(CGC)または遺伝専門医が担当します。NIPTの日本医学会認証施設では、カウンセリング体制が整備されていることが認証要件となっています[2]。

Q3. NIPTで低リスクの結果が出れば、他の出生前検査は不要ですか?

不要とは言えません。NIPTは21・18・13トリソミーなど特定の染色体数的異常を対象とするスクリーニングです。形態異常や単一遺伝子疾患はNIPTでは検出できません。妊婦健診・超音波検査の継続が重要です。

Q4. 判定不能の場合、再検査で結果は出ますか?

再検査で判定できる場合もありますが、胎児ゲノム率が低い体質的な原因(高BMIなど)の場合は再検査後も判定不能となることがあります。遺伝カウンセリングで原因を把握し、羊水検査など別の検査への移行を検討します。

Q5. NIPTの検査前カウンセリングは必須ですか?

日本医学会が認証する施設では、検査前カウンセリングの実施が要件とされています[2]。NIPTを検討する際は、「高リスクだった場合にどうするか」を事前に考える機会として積極的に活用することが推奨されます。

5. まとめ:NIPTの価値は「結果の後の意思決定」にある

NIPTは感度・特異度ともに高精度なスクリーニング検査ですが、その結果だけで診断や次の行動を決定することはできません。

NIPTの結果を遺伝カウンセリングで正確に解釈し、自分の価値観に照らした意思決定を行うこと、それがNIPT受検の本質的な目的です。

NIPTを検討している方は、検査前カウンセリングでパートナーとともに「高リスクだった場合の選択肢」を事前に話し合うことを強くお勧めします。

参照文献

[1] 日本産科婦人科学会・非侵襲性出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針(2023年1月) 日本産科婦人科学会, 2023年1月

[2] NIPT等の出生前検査に関する情報提供及び施設認証の指針 日本医学会出生前検査認証制度等運営委員会, 2022年

[3] NIPTを取り巻く最近の海外の現状(第1回 NIPT等の出生前検査に関する専門委員会 資料3) こども家庭庁, 2023年5月

[4] 遺伝カウンセリングでわかること(NIPT Japan) NIPT Japan, 2025年4月

[5] 新型出生前検査(NIPT)| seeDNA遺伝医療研究所 seeDNA遺伝医療研究所, 2025年

本記事は日本産科婦人科学会・日本医学会の公開指針および公的資料をもとに作成しています。医療的な判断については必ず専門の医療機関にご相談ください。

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監修者

医学博士・医師 広重 佑(ひろしげ たすく)

2010年、鹿児島大学医学部卒業。泌尿器科専門医・指導医、がん治療学会認定医、抗加齢医学会専門医、産業医ほか多数の専門資格を保有。豊富な臨床経験と学術活動を基盤に、患者一人ひとりに寄り添う医療を提供している。

資格:医学博士 / 日本泌尿器科学会専門医・指導医 / がん治療学会認定医 / 抗加齢医学会専門医 / 日本医師会認定産業医 / 性感染症学会認定医 / Certificate of da Vinci system Training As a Console Surgeon