リライティング日 : 2026年 04月 02日
【要約】
中国・南方科技大学が開発した「DNAカセットテープ」は、1kmのテープに362PBを記録し、-20℃で最大2万年の保存が可能。書き換えとランダムアクセスを実現し、次世代アーカイブストレージとして注目されています。
目次
【専門家が解説】超大容量のDNAカセットテープ
デジタルデータの爆発的な増加に伴い、次世代のストレージとして「DNAデータストレージ」が注目されています。DNAは人の設計図として様々な遺伝情報が刻まれていますが、DNAを使えばパソコンの既存の半導体によるハードディスクより大容量のデータを安定的に保存できるのです。
中国の南方科技大学などの研究チームが発表した最新技術は、1980年代のカセットテープの構造を応用し、従来の限界を突破する驚異的な性能を実現しました (1)(2)。
◆ DNAカセットテープの3つの主要スペック

- 圧倒的な記録容量:1kmのテープに約362ペタバイト(PB)のデータを記録可能。これは最新スマートフォンの約150万倍の容量に相当します。
- 驚異的な保存寿命:室温で約300年、凍結保存(-20℃)した場合は「最大2万年」もの間、データを損失することなく保持できると推定されています。
- 書き換え機能:従来の「液体保存方式」では困難だったデータの特定・書き換え・削除を、磁気テープのような構造を採用することで可能にしました (1)。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 記録容量 | 1kmあたり約362PB(スマホ約150万倍) |
| 保存寿命(室温) | 約300年 |
| 保存寿命(-20℃) | 最大約20,000年 |
| 主要機能 | 書き換え/削除/ランダムアクセス可能 |
| 開発機関 | 中国・南方科技大学 ほか |
◆ なぜ「DNA」と「テープ」を組み合わせたのか?

従来のDNA保存技術は、液体中でデータを管理するため、特定の情報を探すのに時間がかかる点が課題でした。研究チームは、ナイロン製のテープ上に微細なバーコードを配置し、その上にDNA液を付着させる「DNAカセットテープ」を開発。これにより、コンピュータのファイル管理のように、必要なデータへ迅速にアクセス(ランダムアクセス)することが可能になりました (2)。
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◆ 既存メディア(HDD・SSD)との比較

現在の主力であるHDDやSSDの寿命は長くても10〜20年程度であり、数年おきのデータ移行が不可欠です。対してDNAテープは、エネルギー消費を抑えながら超長期的な保存が可能なため、公文書、科学的記録、文化遺産といった「コールドストレージ(アーカイブ)」用途に最適です (2)。
| 媒体 | 寿命 | 記録密度 | 消費電力 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| HDD | 約5〜10年 | 中 | 高 | 一般データ保存 |
| SSD | 約10〜20年 | 高 | 中 | 高速処理用途 |
| 磁気テープ | 約30年 | 高 | 低 | 業務アーカイブ |
| DNAカセットテープ | 最大20,000年 | 超高(PB級) | 極低 | 長期コールドストレージ |
◆ 実用化への展望

現在は読み書きの速度に課題がありますが、マイクロ流体技術の進化により高速化が進んでいます。シリコン半導体の物理的限界が近づく中、このDNAカセットテープは、人類の知識を数千年にわたって受け継ぐ「究極のタイムカプセル」となる可能性を秘めています (1)(2)。
よくある質問(FAQ)
Q1. DNAカセットテープはどれくらいのデータを保存できますか?
1kmのテープに約362ペタバイト(PB)のデータを保存可能で、これは最新スマートフォンの約150万倍に相当します。
Q2. DNAデータの保存寿命はどのくらいですか?
常温で約300年、-20℃で凍結保存した場合は最大約2万年保持できると推定されています。
Q3. 既存のHDDやSSDと何が違いますか?
HDD・SSDは寿命が10〜20年で定期的なデータ移行が必要ですが、DNAテープは数千年単位の長期保存と低消費電力を実現します。
Q4. DNAデータの書き換えは可能ですか?
従来の液体DNA保存方式では難しかった書き換え・削除・特定アクセスが、テープ構造の採用により可能になりました。
Q5. 実用化の課題は何ですか?
現在は読み書き速度の遅さが主な課題ですが、マイクロ流体技術の発展により高速化が進められています。
参考文献
(1) DNA Data Storage Cassette Tape『Gigazine、2025年12月』
(2) DNA cassette tape can store every song ever recorded『NewScientist、2025年9月』
(3) Random access in large-scale DNA data storage『Nature、2019年3月』
著者情報
医学博士/富金 起範
筑波大学、生体統御・分子情報医学修士/博士課程卒業
2017年に国内初となる微量DNA解析技術(特許7121440)を用いた出生前DNA鑑定(特許7331325)を開発

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