1.NIPTとは何か?検査の仕組みと検出対象

NIPTとは:母体の血液中に含まれる胎児由来の無細胞DNA(cell-free fetal DNA:cffDNA)を解析し、胎児の染色体異常リスクを評価するスクリーニング検査である。妊娠10週以降に採血のみで実施できる(2)。
標準的なNIPTが対象とする染色体異常は以下の3種類である。
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染色体異常
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疾患名
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NIPTの感度(参考値)
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21トリソミー
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ダウン症候群
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99%前後(1)
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18トリソミー
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エドワーズ症候群
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98%前後(3)
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13トリソミー
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パトウ症候群
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99%前後(3)
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実施施設によっては、性染色体異常(ターナー症候群・クラインフェルター症候群など)や微小欠失症候群(22q11.2欠失症候群など)を追加で検査できる場合がある(2)。
2.NIPTの「陰性(低リスク)」とはどういう意味か?
陰性(低リスク)の定義:検査対象の染色体異常(主に21・18・13トリソミー)のリスクが統計的に非常に低いことを示す結果。「異常がない」という確定診断ではない。
ダウン症候群に関する大規模研究(14万6,958件)では、以下の成績が報告されている(3)。
- 感度(21トリソミー):99.17%
- 特異度(21トリソミー):99.95%
- 陰性的中率:99.8%以上(1)
これは従来の母体血清マーカー検査(感度約87%)と比較して格段に高い精度である(4)。
3.「低リスク」でも完全に安心できない2つの理由
理由①:NIPTが検出できない疾患がある
NIPTは染色体の「数的異常」を主な対象とする。以下の疾患は原理的に検出が困難である。
- 染色体構造異常の一部(転座・逆位など)
- 単一遺伝子疾患(フェニルケトン尿症・嚢胞性線維症など)
- 多くの先天奇形・神経発達症(自閉スペクトラム症・知的障害など)
「低リスク=すべての病気がない」という意味ではない点を明確に理解する必要がある。
理由②:まれに偽陰性が生じる可能性がある
NIPTの不一致結果(偽陽性・偽陰性)を調査した系統的レビューでは、偽陰性が全不一致例の12%を占めていた(5)。主な原因を下表に示す。
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偽陰性の原因
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内容
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限局性胎盤モザイク(CPM)
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胎盤のみに染色体異常が存在し、胎児には異常がない状態
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母体コピー数多型
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母体自身の遺伝子変化がcffDNA解析に影響する
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消失双胎
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一方の胎児が妊娠初期に消失し、そのDNAが結果に影響する
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母体悪性腫瘍
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がん細胞由来DNAが解析結果に混入する
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真の胎児モザイク
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胎児の一部の細胞のみが異常な染色体を持つ状態
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また、母体血中のcffDNA割合が4%未満の場合、検査の信頼性が低下し、検査不能または不正確な結果となるリスクがある(6)。高BMI・妊娠週数が早い場合などで生じやすい。
4.NIPTと確定診断検査の違い:比較表
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比較項目
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NIPT
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羊水穿刺
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絨毛検査(CVS)
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検査の種類
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スクリーニング
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確定診断
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確定診断
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実施時期
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妊娠10週以降
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妊娠16週以降
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妊娠11〜13週
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侵襲性
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なし(採血のみ)
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あり(針を刺す)
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あり(針を刺す)
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流産リスク
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なし
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約0.11〜0.30%
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約0.20〜0.22%
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染色体診断精度
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高い(スクリーニング)
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非常に高い(確定)
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非常に高い(確定)
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検出できる疾患
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主に数的異常
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染色体全般
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染色体全般
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※流産リスクの数値は系統的レビュー・メタ解析による手技関連リスクの推定値。
5.NIPTの陰性結果をどう受け止めればよいか:3ステップ
NIPTで低リスクと判定された後に取るべき行動を以下に示す。
- Step 1:結果の意味を正確に理解する 低リスクとは「主要な染色体異常の可能性が統計的に非常に低い」ことを示す。確定診断ではない。
- Step 2:定期健診・超音波検査を継続する 染色体異常以外の先天的な形態異常は超音波検査で発見される場合がある。定期的な妊婦健診を継続する。
- Step 3:不安がある場合は専門家に相談する 染色体異常の有無を確実に確認したい場合は、産婦人科医または遺伝カウンセラーに相談し、羊水検査・絨毛検査の適応を検討する。
6.まとめ:NIPTの陰性結果が示すこと・示さないこと
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項目
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NIPTで「わかること」
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NIPTで「わからないこと」
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ダウン症候群リスク
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感度99%・陰性的中率99.8%以上で評価
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100%の除外はできない
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18・13トリソミーリスク
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高精度で評価
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稀な偽陰性あり
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染色体構造異常
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一部のみ
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転座・逆位などは原則検出不可
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単一遺伝子疾患
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対象外
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検出不可
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先天奇形・形態異常
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対象外
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超音波検査で評価が必要
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NIPTの陰性結果は信頼性の高い安心の根拠となる。一方で「すべての病気がない」ことを意味しない。妊婦健診全体の中で正しく位置づけ、不明点は必ず産婦人科医や遺伝カウンセラーに相談することが重要である。
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※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断や判断は医療機関でご相談ください。
7.FAQ
Q1. NIPTで陰性が出れば、ダウン症候群は心配しなくてよいですか?
NIPTのダウン症候群に対する感度は99%前後、陰性的中率は99.8%以上と報告されており(1)、陰性結果は高い信頼性を持つ。ただし、NIPTは確定診断検査ではなく、限局性胎盤モザイクや真の胎児モザイクなど生物学的要因による稀な偽陰性が存在する(5)。結果の意味を正確に理解した上で、引き続き定期健診を継続することが推奨される。
Q2. NIPTが検出できない疾患にはどんなものがありますか?
NIPTは染色体の数的異常を主な検出対象とする。染色体構造異常(転座・逆位)・単一遺伝子疾患(フェニルケトン尿症など)・多くの先天奇形・自閉スペクトラム症・知的障害などは原理的に検出できない。「低リスク=すべての病気がない」ではない点を理解することが重要。
Q3. NIPTで偽陰性が起きる原因は何ですか?
主な原因は5つある:①限局性胎盤モザイク(CPM)、②母体コピー数多型、③消失双胎、④母体悪性腫瘍、⑤真の胎児モザイク。また、母体血中のcffDNA割合が4%未満の場合、検査の精度が低下する(6)。高BMIや妊娠週数が浅い場合に低値になりやすい。
Q4. NIPTの陰性結果後に羊水検査を受ける必要はありますか?
多くの場合、NIPTで低リスクと判定された後に羊水検査を追加する必要はない。ただし、染色体異常を確実に除外したい場合、または産婦人科医から勧められた場合は、羊水穿刺(妊娠16週以降)や絨毛検査(妊娠11〜13週)を検討する。いずれも侵襲的検査であり、流産リスク(羊水穿刺:約0.11〜0.30%、絨毛検査:約0.20〜0.22%)を十分理解した上で判断する。
Q5. NIPTはいつから受けられますか?また、対象となる条件はありますか?
NIPTは妊娠10週以降から受検可能である(2)。これは妊娠10週を過ぎると母体血中のcffDNA割合が安定し、検査精度が確保されるためである。実施施設によって対象条件(年齢・リスク因子など)が異なる場合があるため、受検前に医療機関または検査機関に確認することが推奨される。
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参考文献
(1)Palomaki GE, Kloza EM, Lambert-Messerlian GM, et al. DNA sequencing of maternal plasma to detect Down syndrome: an international clinical validation study. Genetics in Medicine, 2011年11月.
(2)seeDNA遺伝医療研究所. 新型出生前検査(NIPT)について. seedna.co.jp, 2023年.
(3)Zhang H, Gao Y, Jiang F, et al. Non-invasive prenatal testing for trisomies 21, 18 and 13: clinical experience from 146,958 pregnancies. Ultrasound in Obstetrics & Gynecology, 2015年1月.
(4)Norton ME, Jacobsson B, Swamy GK, et al. Cell-free DNA analysis for noninvasive examination of trisomy. New England Journal of Medicine, 2015年4月.
(5)Hartwig TS, Ambye L, Sørensen S, Jørgensen FS. Discordant non-invasive prenatal testing (NIPT) – a systematic review. Prenatal Diagnosis, 2017年6月.
(6)Norton ME, Jacobsson B, Swamy GK, et al. Cell-free DNA analysis for noninvasive examination of trisomy. New England Journal of Medicine, 2015年4月.
監修者
医学博士・医師
広重 佑(ひろしげ たすく)
医学博士、日本泌尿器科学会専門医・指導医、がん治療学会認定医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、日本抗菌化学療法学会認定医、性感染症学会認定医、Certificate of da Vinci system Training As a Console Surgeonほか
2010年に鹿児島大学医学部を卒業後、泌尿器科医として豊富な臨床経験を持つ。また、臨床業務以外にも学会発表や論文作成、研究費取得など学術活動にも精力的に取り組んでいる。泌尿器科専門医・指導医をはじめ、がん治療、抗加齢医学、感染症治療など幅広い分野で専門資格を取得。これまで培った豊富な医学知識と技術を活かして、患者様一人ひとりに寄り添った医療を提供している。