1.結論:NIPTの性別判定は高精度だが、まれに誤判定が起こる

NIPTによる性別判定の感度は98.9%、特異度は99.6%であり、非常に高精度な検査である(1)。ただし、Fetal Fraction(FF)の低下・胎盤モザイク・バニシングツインなど複数の原因により、まれに誤判定が生じることがある。NIPTはスクリーニング検査であり、確定診断ではない。
2.NIPTで性別はどのように判定されるのか?
NIPTとは、母体血液中に存在する胎盤由来の微小DNA断片(cell-free fetal DNA:cffDNA)を次世代シーケンサーで解析し、胎児の染色体情報を調べる非侵襲的出生前検査である(2)。日本では妊娠10週前後から受検可能で、羊水検査や絨毛検査と異なり母体・胎児への流産リスクがない。
性別判定の仕組みは以下のとおりである:
- 解析したDNA断片の中にY染色体特有の塩基配列(SRY遺伝子など)が検出された場合 → 男児と判定
- Y染色体由来のDNA断片が検出されなかった場合 → 女児と判定
この判定は超音波検査による外性器の形態確認とは独立した方法であり、妊娠10週という比較的早期から実施できる点が特徴である。
3.NIPTの性別判定精度はどのくらいか?
ポイント(結論): 感度98.9%・特異度99.6%という高い精度を持つが、ゼロリスクではない。
NIPTによる性別判定の感度は98.9%、特異度は99.6%であり、陽性的中率・陰性的中率もそれぞれ高い値を示す。診断精度は妊娠週数とともに上昇する傾向がある。
NIPTと超音波検査の間で性別結果が一致しなかった(不一致)割合は0.0〜0.9%と報告されており、その主な原因としてサンプリングエラー、バニシングツイン、胎盤モザイク、性分化疾患が挙げられている。
130万件超のNIPT症例を対象にした大規模研究では、性別不一致が報告されたのは91件(0.007%、約1万4,300件に1件)であった。
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指標
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数値
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感度(男児を男児と正しく判定する割合)
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98.9%
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特異度(女児を女児と正しく判定する割合)
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99.6%
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超音波との不一致率
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0.0〜0.9%
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大規模研究での不一致率(SNPベース)
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約0.007%
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重要: NIPTはスクリーニング検査であり、確定診断検査ではない。性別を含む結果に疑義がある場合は、羊水検査などの確定診断が推奨される。
4.NIPTの性別判定が誤る主な5つの原因

① Fetal Fraction(FF)の低下
Fetal Fraction(FF)とは、母体血液中の全cell-free DNAに占める胎児(胎盤)由来DNAの割合のことである。
NIPTの精度確保にはFFが4%以上必要とされている。FFが不十分な場合(<4%)は、トリソミー13・18のリスク上昇とも関連する。FFが低い状態ではY染色体由来のDNA断片の検出が不安定となり、男児でも「女児」と誤判定されるリスクが生じる。FFが低下しやすい条件は以下のとおりである:
- 妊娠週数が早い(10週未満)
- 母体のBMIが高い
- 体外受精による妊娠
② 胎盤モザイク(Confined Placental Mosaicism:CPM)
CPMとは、胎盤の細胞(栄養膜細胞)の染色体構成が胎児本体の染色体構成と異なる状態を指す。
胎盤・胎児モザイクは妊娠の2〜3%に生じる。CPMはNIPTの偽陽性結果の最も一般的な原因であり、特にトリソミー13・18および性染色体に多い。Y染色体が胎盤細胞に存在しない場合、実際には男児でも「女児」と誤判定される可能性がある。
③ バニシングツイン(消失双胎)
バニシングツインとは、双胎妊娠において一方の胎児が早期に消失する現象である。
バニシングツイン妊娠においてNIPTの性別判定が超音波検査と一致しなかった割合は、研究によって0.8%〜10.2%と報告されている。不一致のすべての例で「男児」と予測されたが、実際の胎児は女児であった。
消失した双胎からのcffDNAは、胎児が消失した後も少なくとも9週間は母体血液中に残存しうることが報告されている。
④ Y染色体の構造異常・SRY遺伝子転座(46,XX男性症候群)
46,XX男性症候群(De la Chapelle症候群)は、Y染色体上のSRY遺伝子がX染色体に転座することで、46,XXの染色体を持ちながら男性の表現型を示す疾患である。
SRY遺伝子の転座断片が小さい場合、NIPTでY染色体由来のDNA断片が検出されず、実際には男児にあたる胎児が「女児」と誤判定される可能性がある。NIPTによりこの性別不一致が出生前に検出された症例が報告されている。
この状態は新生児男児の約1万〜2万人に1人の頻度で生じる。症例の約80〜90%がSRY陽性であり、SRY転座が父親の精子形成時の組換えによりランダムに生じる。
⑤ 母体キメラ・母体モザイク
きわめてまれではあるが、母親自身が46,XX/46,XYのキメラ(2つの受精卵由来の細胞が混在する状態)や性染色体モザイクである場合、母体血液中にY染色体由来のDNAが含まれることがある。
臓器移植(骨髄・腎臓・肝臓など)を男性ドナーから受けた女性においても、母体血液中にY染色体由来のDNAが含まれ、女児を妊娠しているにもかかわらずNIPTで「男児」と誤判定されるリスクがある。
5.超音波検査とNIPTの性別判定比較表
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検査方法
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判定可能時期
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精度(参考)
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侵襲性
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確定診断
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NIPT
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妊娠10週〜
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感度98.9%・特異度99.6%
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なし
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×(スクリーニング)
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超音波検査
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妊娠14〜18週頃〜
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妊娠14週前後で精度が上昇
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なし
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×(スクリーニング)
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羊水検査
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妊娠15〜16週〜
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ほぼ100%(確定診断)
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あり(流産リスク約0.3%)
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◯
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絨毛検査
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妊娠11〜14週〜
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ほぼ100%(確定診断)
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あり(流産リスク約1%)
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◯
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6.誤判定が疑われる場合の対処法
結論: NIPTと超音波検査の結果が一致しない場合、以下のステップで対処する。
- 担当医への相談:まず担当医・遺伝専門医に報告し、原因の評価を求める
- 超音波検査の再確認:胎児外性器の確認精度は週数・体位によって変動するため、再検査を検討する
- 羊水検査の検討:性別の確定診断が必要な場合、羊水検査(妊娠15〜16週以降)が推奨される
- バニシングツインの有無の確認:初期に双胎が確認されていた場合は、消失した双胎の性別が影響している可能性がある
5.FAQ(よくある質問)
Q1. NIPTの性別判定はどのくらいの確率で外れますか?
感度98.9%・特異度99.6%(1)であり、大規模研究では不一致は約0.007%(1万4,300件に1件)と報告されている。ただし、バニシングツインや胎盤モザイクなど特定のリスク因子がある場合は、不一致率が上昇する。
Q2. NIPTで「女児」と出たのに、超音波で「男の子かも」と言われました。どちらが正しいですか?
どちらの検査も100%ではない。結果が一致しない場合は担当医に相談し、必要に応じて羊水検査による確定診断を検討することが推奨される。
Q3. Fetal Fractionが低いと言われました。性別判定は信頼できますか?
FFが4%未満の場合は、Y染色体由来DNAの検出が不安定になるため、性別判定の信頼性が低下する。再検査や他の検査方法の検討が必要である。
Q4. 日本のNIPT認定施設では性別を教えてもらえないのですか?
日本医学会の認証施設では、産み分け目的の出生前性別告知は原則として実施しない運用となっている。一方、一部の非認証施設では性別判定をオプションとして提供している場合がある。
Q5. NIPTは確定診断ですか?
NIPTはスクリーニング検査であり、確定診断ではない。染色体異常・性別ともに、結果に疑義がある場合は羊水検査・絨毛検査などの確定診断が必要である。
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参考文献
(1)Ormstad SS, et al. Non-invasive prenatal testing (NIPT) for fetal sex determination. Folkehelseinstituttet(ノルウェー公衆衛生研究所), 2016年12月
(2)京都済生会病院「出生前診断について-血液検査で赤ちゃんの染色体異常がわかるNIPT」, 2023年1月
(3)Reilly M, et al. Pitfalls of prenatal diagnosis associated with mosaicism. The Obstetrician & Gynaecologist, 2022年12月
(4)Malan V, et al. Fetal Sex Results of Noninvasive Prenatal Testing and Differences With Ultrasonography. Obstetrics & Gynecology, 2020年
(5)Eekhout D, et al. Non-invasive prenatal testing (NIPT) in twin pregnancies affected by early single fetal demise: A systematic review of NIPT and vanishing twins. Prenatal Diagnosis, 2023年5月
(6)Colombo GI, et al. Detection of SRY-positive 46,XX male syndrome by the analysis of cell-free fetal DNA via non-invasive prenatal testing. Molecular Genetics & Genomic Medicine, 2019年
(7)Discrepancies Between Sex Prediction and Fetal Sex After Prenatal Noninvasive Cell-Free DNA Screening. Journal of the Endocrine Society, 2025年1月
(8)Contemporary OB/GYN: Vanishing twin syndrome affects NIPT results(バニシングツインとNIPT性別不一致の事例報告), 2020年
監修者
医学博士・医師
広重 佑(ひろしげ たすく)
医学博士、日本泌尿器科学会専門医・指導医、がん治療学会認定医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、日本抗菌化学療法学会認定医、性感染症学会認定医、Certificate of da Vinci system Training As a Console Surgeonほか
2010年に鹿児島大学医学部を卒業後、泌尿器科医として豊富な臨床経験を持つ。また、臨床業務以外にも学会発表や論文作成、研究費取得など学術活動にも精力的に取り組んでいる。泌尿器科専門医・指導医をはじめ、がん治療、抗加齢医学、感染症治療など幅広い分野で専門資格を取得。これまで培った豊富な医学知識と技術を活かして、患者様一人ひとりに寄り添った医療を提供している。