【医師が監修】NIPTで妊娠合併症のリスクは上がる?医学的根拠と他検査との違いを解説

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2026.05.31

胎児DNA鑑定

【医師が監修】NIPTで妊娠合併症のリスクは上がる?医学的根拠と他検査との違いを解説

【医師が監修】NIPTで妊娠合併症のリスクは上がる?医学的根拠と他検査との違いを解説

 

「NIPTを受けると赤ちゃんに影響が出るのではないか」「母体への負担はどの程度か」と不安を抱える妊婦さんは少なくありません。本記事では、NIPTが妊娠合併症と関係するのかを、検査の仕組みと国際的な学術データに基づいて解説します。

結論

NIPTは妊娠合併症とは関係しません。

NIPTは母体の腕から採血するだけの非侵襲的検査で、流産・感染・出血などの手技関連リスクは構造的に存在しません。15,000例超を対象とした米国NEJM掲載研究でも、NIPT実施に伴う有害事象は報告されていません(4)。

この記事では、NIPTの仕組み・羊水検査/絨毛検査との違い・学術的エビデンス・FAQを体系的に整理します。

この記事でわかること

  • NIPTが妊娠合併症を起こさない医学的理由
  • 羊水検査・絨毛検査との手技リスクの定量比較
  • NIPTの安全性を裏付ける大規模臨床研究データ
  • よくある5つの質問への回答

1. 結論:NIPTは妊娠合併症を引き起こさない

NIPTは母体の腕からの採血のみで完結する非侵襲的検査のイメージ

NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)は、妊婦から10mL程度の血液を採取するだけで完了する検査です。子宮・胎盤・胎児に針を刺さないため、流産・感染・羊水漏出などの手技関連合併症は原理的に発生しません。

定義:NIPT(Non-Invasive Prenatal Testing)とは、母体血漿中に存在する胎児由来のcell-free DNA(cffDNA)を次世代シーケンサーで解析し、13・18・21番染色体など胎児の染色体数的異常のリスクを評価する非確定的スクリーニング検査です(1)。

2. なぜNIPTは妊娠合併症を起こさないのか|検査の仕組み

NIPTの安全性を理解するには、検査の仕組みを知ることが最短ルートです。結論から言えば、体内に器具を入れない採血のみの検査だからです。

NIPTの仕組みとは|cffDNAを採血で解析

1997年、Y.M. Dennis Loらが医学誌Lancetに発表した論文で、妊婦の血漿中に胎盤由来の胎児DNA断片(cell-free fetal DNA:cffDNA)が存在することが初めて証明されました(1)。これがNIPTの技術的出発点です。

cffDNAは胎盤の栄養膜細胞が自然に崩壊する過程で母体血流中に放出される小さなDNA断片で、胎児の染色体情報を反映します。分娩後は数時間以内に消失することが確認されています。

妊娠10週以降のcffDNA量|検査可能となる理由

妊娠10〜20週における母体血漿中のcffDNA比率(胎児フラクション)は中央値で約10〜15%であり、次世代シーケンシングで安定した解析が可能です(2)。

NIPTの検査手順|4ステップ

  • ステップ1:妊娠10週以降に母体静脈から採血(約10mL)
  • ステップ2:検査機関に検体を輸送
  • ステップ3:次世代シーケンサーでcffDNAを解析
  • ステップ4:21・18・13トリソミーのリスクを算出

施設によっては性染色体異常(ターナー症候群、クラインフェルター症候群)や微小欠失症候群(22q11.2欠失症候群)も対象です(seeDNA 新型出生前検査)。

3. 羊水検査・絨毛検査との違い|なぜNIPTだけが合併症リスクゼロなのか

NIPT・羊水検査・絨毛検査の侵襲性の違いを示すイメージ

NIPTの安全性は、確定診断として用いられる羊水検査・絨毛検査と比較すると鮮明になります。両者の違いは「体内への侵襲の有無」にあります。

各検査の侵襲性の比較

羊水検査は妊娠15週以降に、超音波ガイド下で母体の腹壁から子宮内へ細い針を刺し、約20mLの羊水を採取する侵襲的検査です。

絨毛検査は妊娠10〜14週ごろに、腹壁または子宮頸部から針・カテーテルで胎盤絨毛組織を採取する侵襲的検査です。

いずれも子宮内へ直接器具を挿入するため、流産・感染・羊水漏出・出血のリスクがゼロではありません。

手技関連の流産リスク|最新メタ解析の数値

Salomon らが2019年にUltrasound in Obstetrics & Gynecologyで公表した系統的レビュー・メタ解析(症例総数:羊水検査63,723例、絨毛検査13,011例)によれば、手技関連の流産リスクは以下の通りです(3)。

検査 手技関連流産リスク 95%信頼区間
羊水検査 0.30% 0.11〜0.49%
絨毛検査(CVS) 0.20% −0.13〜0.52%
NIPT 0%
(構造的に発生しない)

超音波ガイド下の手技向上により羊水検査・絨毛検査の流産リスクは以前より低下していますが、ゼロにはなりません。一方、NIPTは採血のみのため、「針を子宮に刺す行為に起因する合併症」という概念そのものが存在しません。

3検査の一覧比較

項目 NIPT 羊水検査 絨毛検査
侵襲性 非侵襲(採血) 侵襲(穿刺) 侵襲(穿刺)
実施時期 10週以降 15週以降 10〜14週
手技関連流産リスク 0% 0.30% 0.20%
検査の位置づけ スクリーニング 確定診断 確定診断
主な対象疾患 21・18・13トリソミー等 染色体異常全般 染色体異常全般

4. NIPTの安全性を裏付ける臨床エビデンス

NIPTの安全性は、世界中の大規模臨床研究により直接的に確認されています。

NEJM 2015|15,841例の多施設前向き試験

2015年にNew England Journal of Medicine誌に掲載されたNortonらの前向き多施設共同試験では、35施設15,841名の妊婦を対象にNIPTの精度が検証されました。この試験においてNIPTに起因する流産・感染・子宮への有害事象は報告されませんでした(4)。

Gil 2017|国際メタ解析

Gilらが2017年にUltrasound in Obstetrics & Gynecology誌に公表した系統的レビュー・メタ解析では、35件のNIPT研究が統合分析され、21トリソミー検出感度99.7%・特異度99.96%と高精度であり、母子ともに検査手技に関連した有害事象は認められていません(5)。

日本産科婦人科学会の見解

日本産科婦人科学会の指針でも、NIPTは「母体血を採取するのみで妊婦への身体的なリスクを伴わない検査」と明記されています(6)。

5. NIPTの限界|安全でもスクリーニング検査であることに注意

NIPTはスクリーニング検査であることを示す注意点のイメージ

NIPTは安全で高精度な検査ですが、確定診断ではなくスクリーニング検査です。高リスク判定が出た場合は、羊水検査などによる確定診断が推奨されます。

NIPTで留意すべき3点

  • 非確定的検査:高リスク結果でも偽陽性の可能性があります。確定には侵襲的検査が必要です。
  • 胎盤モザイク:解析対象は胎盤由来cffDNAのため、胎盤と胎児で染色体構成が異なる場合は結果にずれが生じることがあります。
  • 対象疾患の限定:主な対象は数的染色体異常です。構造異常や単一遺伝子疾患は原則として対象外です。

6. よくある質問(FAQ)

Q1. NIPTを受けると流産のリスクは上がりますか?

上がりません。NIPTは採血のみで完結するため、侵襲的処置に伴う流産リスクは構造的に発生しません。15,000例超の大規模試験でも、NIPTに起因する流産は報告されていません(4)。

Q2. NIPTの採血は赤ちゃんに影響しますか?

影響しません。採血は母体の腕の静脈から行い、子宮・胎盤・胎児に触れることはありません。解析対象となるcffDNAは、もともと母体血中に存在する胎盤由来のDNA断片です。

Q3. NIPTと羊水検査はどちらが安全ですか?

手技安全性の観点ではNIPTが優れます。羊水検査は子宮穿刺を伴い、0.30%の手技関連流産リスクがあります(3)。一方、NIPTには手技関連リスクがありません。ただし、NIPTはスクリーニング検査であり、確定診断には羊水検査が必要な場合があります。

Q4. NIPTはいつから受けられますか?

妊娠10週0日以降に受検可能です。10週未満ではcffDNA量が不安定で、十分な解析精度が得られない可能性があるためです(2)。

Q5. NIPTの結果が「陽性」だった場合はどうなりますか?

確定診断のために羊水検査などの侵襲的検査が推奨されます。NIPTはあくまでリスク評価のためのスクリーニング検査であり、診断を確定するものではありません(詳細はseeDNA:NIPTの精度が100%にならない理由)。

7. まとめ|NIPTは妊娠経過に影響しない安全性の高い検査

  • NIPTは母体の採血のみで完了する非侵襲的検査である
  • 子宮・胎盤・胎児への直接的侵襲がないため、手技関連の合併症リスクは構造的に存在しない
  • 羊水検査・絨毛検査には0.20〜0.30%の手技関連流産リスクがあるが、NIPTには該当しない
  • 15,000例を超える国際試験とメタ解析で、NIPTに起因する有害事象は報告されていない
  • ただしNIPTはスクリーニング検査であり、高リスク結果は羊水検査による確定診断が必要である

NIPTに関する詳細や受検のご相談は、認証施設または遺伝カウンセリングを提供する機関にご確認ください。

参考文献

1. Lo YMD, et al. Presence of fetal DNA in maternal plasma and serum. The Lancet, 1997年8月.

2. Hui L, Bianchi DW. Factors affecting the fetal fraction in noninvasive prenatal screening: A review. Frontiers in Pediatrics, 2022年1月.

3. Salomon LJ, et al. Risk of miscarriage following amniocentesis or chorionic villus sampling: systematic review of literature and updated meta-analysis. Ultrasound in Obstetrics & Gynecology, 2019年5月.

4. Norton ME, et al. Cell-free DNA analysis for noninvasive examination of trisomy. New England Journal of Medicine, 2015年4月.

5. Gil MM, et al. Analysis of cell-free DNA in maternal blood in screening for aneuploidies: updated meta-analysis. Ultrasound in Obstetrics & Gynecology, 2017年9月.

6. 公益社団法人日本産科婦人科学会倫理委員会. 母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針. 日本産科婦人科学会, 2022年.

本記事は査読付き国際学術誌および公益社団法人日本産科婦人科学会の公開指針をもとに作成しています。医療的な判断については必ず専門の医療機関にご相談ください。

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監修

医学博士・医師 広重 佑(ひろしげ たすく)

医学博士、日本泌尿器科学会専門医・指導医、がん治療学会認定医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、日本抗菌化学療法学会認定医、性感染症学会認定医、Certificate of da Vinci system Training As a Console Surgeonほか

2010年に鹿児島大学医学部を卒業後、泌尿器科医として豊富な臨床経験を持つ。また、臨床業務以外にも学会発表や論文作成、研究費取得など学術活動にも精力的に取り組んでいる。泌尿器科専門医・指導医をはじめ、がん治療、抗加齢医学、感染症治療など幅広い分野で専門資格を取得。これまで培った豊富な医学知識と技術を活かして、患者様一人ひとりに寄り添った医療を提供している。