【医師が監修】NIPTは病院でなくても受けられる|認証医療機関と専門検査機関の違い・選び方
この記事の結論
NIPTは認証医療機関と専門検査機関のいずれでも実施可能です。ただし採血は必ず医療機関で行われます。両者は検査対象疾患・年齢制限・遺伝カウンセリング体制の点で異なるため、目的に合った選択が重要です。
目次
1. 結論:NIPTは病院(認証医療機関)以外でも、提携医療機関での採血により受けられる
NIPTは認証医療機関と専門検査機関のいずれでも実施可能です。ただし採血は必ず医療機関で行われます。両者は検査対象疾患、年齢制限、遺伝カウンセリング体制の点で異なります。
2. NIPTとは|母体血を用いた非侵襲的出生前遺伝学的検査の定義

NIPT(Non-Invasive Prenatal genetic Testing)とは、妊婦の血液中に存在する胎児・胎盤由来のcell-free DNA(cfDNA)を解析し、特定の染色体異常リスクを評価するスクリーニング検査です。
採血のみで実施でき、流産リスクを伴う侵襲的検査(羊水検査・絨毛検査)の前段階として位置づけられます。日本では2013年に臨床研究として開始され、2022年7月から日本医学会「出生前検査認証制度等運営委員会」による認証制度のもとで運用されています(1)。
3. NIPTはどこで受けられる?2つの選択肢

NIPTを受ける方法は、大きく2つに分類されます。
① 認証医療機関で受ける
認証医療機関とは、日本医学会「出生前検査認証制度等運営委員会」の審査を通過した医療機関です。認証施設は「基幹施設」(大学病院など)と、それと連携する「連携施設」(クリニック等)の2種類で構成されます(1)。
- 検査対象:21トリソミー(ダウン症候群)・18トリソミー(エドワーズ症候群)・13トリソミー(パトー症候群)の3疾患
- 年齢要件:原則として出産時35歳以上、または胎児に染色体異常の可能性が示唆される所見がある妊婦
- 特徴:検査前後の遺伝カウンセリングが必須(2)
② 専門検査機関を通じて受ける
専門検査機関とは、NIPTの分析を専門に行う機関であり、近隣の提携医療機関で採血を実施したうえで検体を解析する仕組みです。
- 検査対象:3疾患に加え、性染色体異数性(ターナー症候群、クラインフェルター症候群、トリプルX症候群、XYY症候群)や微小欠失症候群を選択可能なプランあり
- 年齢要件:年齢制限なし
- 特徴:価格・アクセス・検査項目の選択肢が幅広い
微小欠失症候群は、染色体の一部が欠失することで生じる疾患群で、22q11.2欠失症候群(ディジョージ症候群)や1p36欠失症候群が代表例です(3)。通常の染色体検査では検出が難しい疾患も含まれます。
4. 認証医療機関と専門検査機関の違い|比較表
両者の主な相違点を以下に整理します。
| 項目 | 認証医療機関 | 専門検査機関 |
|---|---|---|
| 認証主体 | 日本医学会 出生前検査認証制度等運営委員会 | 民間機関(ISO9001等の国際品質規格を取得している機関あり) |
| 検査対象疾患 | 21・18・13トリソミーの3疾患 | 3疾患+性染色体異数性+微小欠失症候群(プランによる) |
| 年齢制限 | 原則35歳以上(または特定の医学的所見あり) | 年齢制限なし |
| 遺伝カウンセリング | 検査前後で必須 | 機関により対応が異なる(提携医師・認定遺伝カウンセラーの窓口を整備する機関あり) |
| 採血実施場所 | 認証医療機関 | 提携医療機関 |
| 確定検査フォロー | 基幹施設または連携施設で対応 | 機関により補助制度・提携医療機関案内の有無が異なる |
| 認可施設数 | 2025年9月時点で全国650施設以上(1) | 非公開(機関により差あり) |
5. 認証施設が重視される3つの理由|検査前に理解しておきたい背景
認証制度が設けられた背景には、検査結果の解釈と意思決定支援に関する明確な医学的根拠があります。
理由①:NIPTは確定診断ではなくスクリーニング検査
NIPTは陽性的中率(PPV: Positive Predictive Value)が対象疾患と年齢により大きく異なるスクリーニング検査です。
大規模研究では、21トリソミー単胎妊娠におけるPPVは概ね90%以上と報告される一方、13トリソミーのPPVは46%程度との報告もあります(4)。低年齢妊婦が高リスクと判定された場合、実際の染色体異常確率は低くなる傾向があります。
理由②:偽陽性の主因として胎盤性モザイクが存在
NIPTは胎盤由来cfDNAを解析するため、胎盤限局性モザイク(CPM: Confined Placental Mosaicism)により偽陽性が生じます。
CPMは胎盤の細胞にのみ染色体異常が存在し、胎児自身は正常核型である現象です。絨毛検査を受けた妊娠の約1〜2%でCPMが認められ、NIPT偽陽性の主要原因とされています(5)。陽性結果が出た場合は、羊水検査などの確定的検査による確認が推奨されています(6)。
理由③:遺伝カウンセリングを伴う意思決定支援
国際産前診断学会(ISPD)、米国産科婦人科学会(ACOG)等の主要学会は、NIPTを遺伝カウンセリングとあわせて提供することを推奨しています(7)。
検査前に「何がわかるのか」「高リスク判定の場合の選択肢」を理解する機会を持つことは、検査を受けるすべての妊婦にとって重要なプロセスです。
6. 専門検査機関でNIPTを受ける際の確認ポイント|3つのチェック項目

専門検査機関を選択する場合、以下の3点を事前に確認することで、検査後の混乱を避けられます。
① 高リスク判定後のフォロー体制
- 確定診断(羊水検査・絨毛検査)費用の補助制度の有無
- 遺伝カウンセリングを受けられる医療機関の紹介可否
- 認定遺伝カウンセラーまたは臨床遺伝専門医による問い合わせ窓口の整備状況
② 検査精度と品質管理
- ISO9001など国際品質規格の取得状況
- 判定精度・解析実績の公開状況
- 解析機関の所在地と認証状況
③ 検査項目の妥当性
全染色体や微小欠失症候群を対象とする拡張検査は、情報量が多い反面、有病率の低い疾患はPPVが低下します。
「検査項目数が多いほど良い」とは限らないため、各項目の臨床的意義と陽性的中率を事前に確認することが重要です。
7. 選び方のステップ|3つの判断軸
NIPT実施機関を選ぶ際の判断ステップを整理します。
| ステップ | 判断軸 | 内容 |
|---|---|---|
| STEP 1 | 検査目的の明確化 | 3疾患のみで十分か、性染色体異数性や微小欠失症候群も検査対象に含めるかを決定する |
| STEP 2 | 年齢・所見の確認 | 出産時35歳以上または医学的所見ありの場合は認証施設が選択可能。それ以外は専門検査機関を検討する |
| STEP 3 | フォロー体制の確認 | 高リスク判定時の確定検査・遺伝カウンセリングの提供体制を事前に確認する |
8. 結論:「どこで受けるか」より「納得して判断できる環境」が重要
NIPTは認証医療機関でなくても、提携医療機関での採血を通じて受検可能です。重要なのは検査結果を正確に理解し、判定後の対応を事前に把握できる環境を選ぶことです。
NIPTはスクリーニング検査であり、結果は「リスクの高低」を示すものです。検査機関の認証区分にかかわらず、遺伝カウンセリングや事前相談体制が整っている機関を選択することが、後悔の少ない意思決定につながります。
9. よくある質問(FAQ)
Q1. NIPTは大きな病院でなくても受けられますか?
受けられます。NIPTの採血は医療機関で行う必要がありますが、認証医療機関だけでなく、専門検査機関と提携するクリニック等でも実施可能です。2025年9月時点で認証医療機関は全国650施設以上に拡大しており(1)、専門検査機関の提携クリニックも全国に存在します。
Q2. 認証施設と専門検査機関で、検査精度は異なりますか?
解析の感度・特異度はいずれも高水準ですが、検査対象疾患の範囲が異なります。認証施設は21・18・13トリソミーの3疾患に限定され、専門検査機関は性染色体異数性や微小欠失症候群を含むプランを選択できます。微小欠失症候群など有病率の低い疾患は、陽性的中率(PPV)が相対的に低くなる傾向があります(8)。
Q3. NIPTで陽性と判定された場合、必ず染色体異常があるのですか?
陽性判定は確定診断ではありません。胎盤限局性モザイク(CPM)、消失双胎、母体側のコピー数変異などにより偽陽性が生じる可能性があります(5)。陽性結果が出た場合は、羊水検査などの確定的検査による確認が必要です。
Q4. 専門検査機関を選ぶ際の最も重要なチェックポイントは何ですか?
高リスク判定時のフォロー体制です。具体的には、確定診断費用の補助制度、遺伝カウンセリングを受けられる医療機関の紹介、認定遺伝カウンセラーまたは臨床遺伝専門医による相談窓口の有無を確認してください。
Q5. NIPTを受けるかどうかを決める前に、何を理解しておくべきですか?
NIPTがスクリーニング検査であり確定診断ではないこと、対象疾患ごとに陽性的中率が異なること、高リスク判定の場合に確定検査が必要となることを理解しておく必要があります。検査前に遺伝カウンセリングまたは事前相談を受けることが推奨されています(7)。
参考文献
(1)NIPT認証医療機関・認証検査分析機関一覧 出生前検査認証制度等運営委員会(日本医学会)、2025年9月
(2)NIPT等の出生前検査に関する情報提供及び施設認証の指針 出生前検査認証制度等運営委員会、2025年
(3)Confined placental mosaicism for 22q11.2 deletion as the etiology for discordant positive NIPT results Prenatal Diagnosis、2023年
(4)Efficiency of non-invasive prenatal screening in pregnant women at advanced maternal age BMC Pregnancy and Childbirth、2021年
(5)胎盤性モザイク(confined placental mosaicism : CPM)について 日本産科婦人科学会(公益社団法人)、2017年
(6)Case Report: Challenges of Non-Invasive Prenatal Testing (NIPT): A Case Report of Confined Placental Mosaicism Frontiers in Genetics、2022年4月
(7)母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針 日本産科婦人科学会(公益社団法人)倫理委員会
(8)Professional Guidance on the Role of NIPT as a First Tier Screening Test The ObG Project(NSGC・ACOG・SMFM共同声明の解説)、2026年1月
(9)NIPTを実施する認証施設|妊娠中の検査に関する情報サイト こども家庭庁(prenatal.cfa.go.jp)
本記事は日本医学会・日本産科婦人科学会・こども家庭庁の公開資料、および査読付き国際学術誌の論文をもとに作成しています。医療的な判断については必ず専門の医療機関にご相談ください。
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監修者
広重 佑(ひろしげ たすく)/医学博士・医師
2010年 鹿児島大学医学部 卒業
【専門・資格】 日本泌尿器科学会専門医・指導医 / がん治療学会認定医 / 抗加齢医学会専門医 / 日本医師会認定産業医 / 日本抗菌化学療法学会認定医 / 性感染症学会認定医 / Certificate of da Vinci system Training As a Console Surgeon
泌尿器科医として豊富な臨床経験を有し、学会発表・論文作成・研究費取得など学術活動にも従事。泌尿器科、がん治療、抗加齢医学、感染症治療など幅広い分野で専門資格を取得している。
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