【専門家が解説】NIPTの偽陽性・偽陰性はなぜ起きる?原因と対策
結論:NIPTは「ほぼ正確」だが「100%」ではない
NIPT(新型出生前診断)とは、妊婦さんの血液を採るだけで、お腹の赤ちゃんの染色体の数の異常(ダウン症候群など)を調べるスクリーニング検査です。とても正確な検査ですが、まれに「陽性なのに赤ちゃんは正常」「陰性なのに赤ちゃんに異常がある」というズレが起こります。前者を偽陽性、後者を偽陰性と呼びます。原因の多くは、赤ちゃん自身ではなく「胎盤」にあります。
1. なぜ胎盤が関係するの?NIPTの仕組み

NIPTが調べているのは、実は赤ちゃんの細胞そのものではありません。母体血液中を漂う胎盤由来のDNA断片(cffDNA)を解析しています。胎盤と赤ちゃんは、もともと同じ受精卵から分かれたきょうだいのような関係ですが、まれに胎盤だけが違う染色体を持つことがあります。このズレが結果のズレを生みます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 21トリソミー検出感度 | 99%以上 |
| 特異度 | 99.9%以上 |
| 偽陽性率の目安 | 約3% |
| 偽陰性率の目安 | 0.1%未満 |
| 推奨採血時期 | 妊娠10週以降 |
出典:seeDNA遺伝医療研究所(1)
2. 偽陽性とは?主な4つの原因

偽陽性とは、NIPTが「陽性」と出たのに、実際の赤ちゃんの染色体は正常である状態を指します。
① 胎盤モザイク
胎盤の一部の細胞だけに染色体異常があり、赤ちゃん本体は正常なケースです。胎盤モザイクは妊娠の2〜3%で起こり、とくにターナー症候群(X染色体が1本)や13トリソミーで頻度が高いと報告されています(2)。
② 消失双胎(一方の赤ちゃんが早期に亡くなるケース)
もともと双子だったが、一方が妊娠初期に亡くなった場合、亡くなった胎児側の胎盤DNAが数週間にわたり母体血液中に残り続け、生きている赤ちゃんの結果に影響することがあります(3)。
③ 母体モザイク
母親自身の一部の細胞だけに染色体の変化があるケースです。多くの検査は「母親の染色体は正常」と仮定して解析するため、これが誤差の原因になります。
④ 母体のがん
妊娠中に見つかる悪性腫瘍はまれ(およそ1000人に1人程度)ですが、腫瘍由来のDNAが血液中に混ざり、複数の染色体に異常があるような結果を示すことがあります(4)。複数の染色体異常が同時に出た場合は、母体側の精査が検討されます。
3. 偽陰性とは?主な2つの原因

偽陰性とは、NIPTが「陰性」と出たのに、実際には赤ちゃんに染色体異常がある状態です。偽陽性より頻度は低いとされています。
① 胎児フラクションの不足
血液中の胎盤由来DNAの割合(胎児フラクション)が少なすぎると、正確な判定ができません。高いBMI、低分子ヘパリンの使用、妊娠週数が早すぎる場合などに起こりやすく、判定不能・再検査につながることがあります(5)。
② 胎盤は正常でも赤ちゃん本体だけに異常があるケース
胎盤モザイクは偽陽性の原因になる一方、逆に胎盤側だけが正常で赤ちゃん本体に異常がある場合は、偽陰性の原因になります。実際にこのパターンの症例報告もあります(6)。
4. 偽陽性・偽陰性の原因比較
| 分類 | 原因 | ポイント | 対応 |
|---|---|---|---|
| 偽陽性 | 胎盤モザイク | 最も多い原因 | 羊水検査で確定 |
| 偽陽性 | 消失双胎 | 双子妊娠の既往に注意 | 超音波で確認 |
| 偽陽性 | 母体モザイク | 母親側の染色体差 | 母体核型検査 |
| 偽陽性 | 母体のがん | 複数染色体異常が手がかり | 腫瘍精査 |
| 偽陰性 | 胎児フラクション不足 | BMI・週数・薬剤が影響 | 再採血 |
| 偽陰性 | 胎盤側のみ正常 | まれなモザイクパターン | 超音波・羊水検査 |
5. NIPTが陽性だったらどうする?

- 遺伝カウンセリングを受ける(結果の意味を専門家と確認)
- 確定診断(羊水検査・絨毛検査)を受ける(実際の核型を調べる)
- 複数染色体異常が疑われる場合は、母体側の精査も検討する
NIPTはあくまでスクリーニング検査であり、確定診断ではありません。陽性だからといって赤ちゃんに異常が確定したわけではなく、逆に陰性でも100%の保証にはならないことを理解しておくことが大切です。seeDNA遺伝医療研究所でも、陽性結果後には遺伝カウンセリングと確定診断を受けることを勧めています。
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6. FAQ
Q1. NIPTが陽性でも赤ちゃんが健康なことはありますか?
はい。胎盤モザイクや消失双胎などが原因で、NIPTが陽性でも赤ちゃん自身に異常がない「偽陽性」が起こります。確定診断で正常と判明するケースがあります。
Q2. NIPTで陰性なら安心してよいですか?
陰性的中率は非常に高いですが、100%ではありません。胎児フラクションが不足していた場合などに、まれに偽陰性が起こります。通常の妊婦健診は継続することが推奨されます。
Q3. 胎盤モザイクはなぜ起きるのですか?
受精卵が分裂していく過程で、胎盤になる細胞だけに染色体の分配ミスが起こることが原因です。赤ちゃん本体の細胞は正常なままであることが多いとされています。
Q4. BMIが高いとNIPTの精度は下がりますか?
はい。BMIが高いと胎児フラクションが下がりやすく、判定不能や偽陰性のリスクが上がる可能性があります。再採血や妊娠週数の調整で改善する場合があります。
Q5. NIPTで陽性が出たら次に何をすればよいですか?
まず遺伝カウンセリングを受け、その後に羊水検査などの確定診断を受けることが推奨されます。自己判断せず専門家に相談することが大切です。
7. 参考文献
(1)seeDNA遺伝医療研究所、2025年8月
(2)The Obstetrician & Gynaecologist、2023年1月
(3)American Journal of Obstetrics & Gynecology、2023年11月
(4)Case Reports in Obstetrics and Gynecology、2022年4月
(6)Medicine(Baltimore)、2020年7月
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医学博士/検査員:L. L.
国際医療福祉大学大学院にて臨床医学の博士号を取得後、遺伝子検査機関にて勤務。主に親子鑑定および出生前DNA鑑定の検査・データ解析を担当。

