【医師が監修】胎盤限局性モザイク(CPM)とは?NIPT偽陽性の原因と対応
CPMとは、胎盤の一部にだけ染色体異常があり、赤ちゃん本人の染色体は正常な状態です。NIPTは主に胎盤由来のDNAを調べるため、CPMがあると偽陽性(高リスク判定)が出ることがあります。
NIPT(新型出生前診断)は、妊婦さんの採血だけで胎児の染色体異常の可能性を調べられる検査として、広く行われるようになりました。
精度の高い検査ですが、「高リスク」と判定されても、実際には赤ちゃんに染色体異常がないケースがあります。
その大きな原因の一つが「胎盤限局性モザイク(Confined Placental Mosaicism:CPM)」です。聞き慣れない言葉かもしれませんが、NIPTを受ける前に知っておくと、結果を落ち着いて受け止める助けになります。
本記事では、CPMの仕組みから、高リスク判定が出たときの対応までをわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- CPM(胎盤限局性モザイク)の定義と、発生する2つの仕組み
- CPMがNIPTの偽陽性(高リスク判定)につながる理由
- 高リスク判定が出たときの確定検査の選び方と、その後の見守り方
目次
1. 胎盤限局性モザイク(CPM)とは?発生する仕組みを解説

CPMとは、胎盤の細胞の一部に染色体異常があるものの、赤ちゃん本人の染色体は正常である状態を指します。絨毛検査を受けた妊娠の約1〜2%に見られるとされています[2]。
CPMとは、胎盤の細胞の一部に染色体異常があるものの、赤ちゃん本人の染色体は正常である状態を指します。1983年に初めて報告された現象で[1]、絨毛検査を受けた妊娠の約1〜2%に見られるとされています[2]。
「モザイク」とはどういう状態?
「モザイク」とは、正常な染色体を持つ細胞と、異常な染色体を持つ細胞が混在している状態のことです。
受精卵は分裂を繰り返しながら、赤ちゃんの体になる細胞と、胎盤になる細胞に分かれていきます。この過程で、胎盤側の細胞だけに染色体の数の変化が起こると、CPMが生じます。
CPMが発生する2つの仕組みとは?
発生の仕組みは、主に次の2つと考えられています[3]。
表1:CPMが発生する主な仕組み[3]
| 仕組み | 内容 |
|---|---|
| ① 細胞分裂途中の 分配ミス |
1つ目は、受精後の細胞分裂の途中で、胎盤になる細胞の一部に染色体の分配ミスが起こるケースです。この場合、異常は胎盤の一部にとどまります。 |
| ② トリソミー レスキュー |
2つ目は「トリソミーレスキュー」と呼ばれるケースです。受精の時点で染色体が1本多い状態(トリソミー)だったものの、赤ちゃんになる細胞では余分な染色体が失われて正常に戻り、胎盤にだけトリソミーの細胞が残る現象です。 |
CPMのタイプⅠ〜Ⅲの違いは?
なお、CPMは異常の存在する部位によってタイプⅠ〜Ⅲに分類されます。
絨毛の表層をつくる栄養膜の細胞(細胞性栄養膜)にのみ異常があるもの、内側の絨毛の芯にあたる組織(間葉系組織)にのみあるもの、その両方にあるものに分けられ、タイプによって検査結果への影響が異なります[3]。
表2:CPMのタイプ分類(異常の存在する部位別)[3]
| タイプ | 異常が存在する部位 |
|---|---|
| タイプⅠ | 絨毛の表層をつくる栄養膜の細胞(細胞性栄養膜)のみ |
| タイプⅡ | 内側の絨毛の芯にあたる組織(間葉系組織)のみ |
| タイプⅢ | 細胞性栄養膜と間葉系組織の両方 |
※ タイプによって検査結果への影響が異なります。
2. なぜCPMがNIPTの偽陽性につながるのか?

NIPTが直接調べているのは赤ちゃん本人の細胞ではなく、胎盤の細胞のDNAです。そのため、CPMの場合、赤ちゃんの染色体が正常であっても「高リスク」と判定されることがあります。
NIPTが実際に調べているのは誰のDNA?
NIPTは、母体の血液中に流れている「胎児由来のDNA」を分析する検査です。ただし、この「胎児由来」とされるDNAは、実際には主に胎盤の細胞(細胞性栄養膜)から放出されたものです。
つまり、NIPTが直接調べているのは赤ちゃん本人の細胞ではなく、胎盤の細胞のDNAということになります。
そのため、胎盤にだけ染色体の異常があるCPMの場合、赤ちゃんの染色体が正常であっても、NIPTでは「高リスク」と判定されることがあります。これが、いわゆる偽陽性(実際には異常がないのに高リスクと判定されること)の仕組みです。
CPMによる偽陽性が起こる流れ
① NIPTは母体の血液中の「胎児由来のDNA」を分析する
② そのDNAは、実際には主に胎盤の細胞(細胞性栄養膜)から放出されたもの
③ 胎盤にだけ染色体の異常がある(CPM)
④ 赤ちゃんの染色体が正常でも「高リスク」と判定される=偽陽性
13・18・21番以外のトリソミーで注意が必要なのはなぜ?
特に、13・18・21番以外の染色体のトリソミー(7番や16番など)が検出された場合、CPMが原因となっている場合があることが報告されています[4]。
これらの染色体のトリソミーは、赤ちゃん自身に存在すると妊娠の継続が難しいことが多く、妊娠が順調に進んでいる場合は胎盤に限局している可能性が高いと考えられるためです。
3. NIPTで高リスク判定が出たら?CPMを考慮した検査と対応

高リスク判定が出ても、それだけで赤ちゃんに染色体異常があると確定するわけではありません。CPMの可能性が考えられる場合には、羊水検査が推奨されるケースが多くなっています。
高リスク判定=染色体異常の確定ではない?
NIPTはあくまで「スクリーニング検査」です。高リスク判定が出ても、それだけで赤ちゃんに染色体異常があると確定するわけではありません。
NIPTで高リスクと判定された場合は、妊娠に関する重要な判断の前に確定検査を受けることが推奨されます。
絨毛検査と羊水検査の違いは?
確定検査には主に「絨毛検査」と「羊水検査」がありますが、CPMを考慮すると選び方に注意が必要です。
絨毛検査は胎盤の組織を採取するため、NIPTと同じく胎盤の染色体異常を拾ってしまい、赤ちゃんの染色体の状態を正確に反映できない場合があります[5]。
一方、羊水検査は、羊水中に浮遊する赤ちゃん由来の細胞を調べるため、CPMの影響を受けにくいとされています[5]。そのため、CPMの可能性が考えられる場合には、羊水検査が推奨されるケースが多くなっています。
羊水検査は一般に妊娠15〜16週以降に実施されます。
表3:CPMを考慮した確定検査の比較[5]
| 項目 | 絨毛検査 | 羊水検査 |
|---|---|---|
| 調べるもの | 胎盤の組織 | 羊水中に浮遊する赤ちゃん由来の細胞 |
| CPMの影響 | 影響あり NIPTと同じく胎盤の染色体異常を拾ってしまい、赤ちゃんの染色体の状態を正確に反映できない場合がある |
影響を受けにくい CPMの影響を受けにくいとされている |
| CPMの可能性が ある場合 |
選び方に注意 | 推奨 されるケースが多い |
確定検査で異常がなくても注意すべきことは?
また、赤ちゃんの染色体が正常でも、CPMがあると胎盤の機能に影響が出て、胎児発育不全などにつながるケースがあることが報告されています[2][3]。
そのため、確定検査で異常がなかった場合でも、妊婦健診での超音波検査などを通じて、赤ちゃんの発育を丁寧に見守ることが大切です。
結果の受け止め方や今後の選択に不安がある場合は、遺伝カウンセリングを活用し、専門家と一緒に一つひとつ確認していくことをおすすめします。
チェックリスト:NIPTで高リスク判定が出たときの確認ポイント
☐ NIPTは「スクリーニング検査」であり、高リスク判定だけで確定ではないことを理解する
☐ 妊娠に関する重要な判断の前に、確定検査を受ける
☐ CPMの可能性が考えられる場合は、羊水検査(一般に妊娠15〜16週以降)を検討する
☐ 確定検査で異常がなくても、妊婦健診の超音波検査などで発育を見守る
☐ 不安がある場合は、遺伝カウンセリングを活用する
4. まとめ:CPMを知り、NIPTの結果を正しく理解するために
NIPTで高リスク判定が出ても、すぐに結論を出す必要はありません。CPMの可能性も踏まえて、羊水検査などの確定検査で赤ちゃん自身の染色体を確認することが大切です。
胎盤限局性モザイク(CPM)は、胎盤にだけ染色体異常が存在し、赤ちゃん本人の染色体は正常である状態です。
NIPTは主に胎盤由来のDNAを分析しているため、CPMがあると赤ちゃんに異常がなくても高リスクと判定されることがあります。
NIPTで高リスク判定が出ても、すぐに結論を出す必要はありません。CPMの可能性も踏まえて、羊水検査などの確定検査で赤ちゃん自身の染色体を確認することが大切です。
検査の仕組みを正しく理解しておくことで、結果に振り回されることなく、落ち着いて次の一歩を選べるようになります。
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5. よくある質問(FAQ)
本文の内容をもとに、CPMとNIPTの結果についてよくある質問をまとめました。
Q. 胎盤限局性モザイク(CPM)とは何ですか?
A. 胎盤の細胞の一部に染色体異常があるものの、赤ちゃん本人の染色体は正常である状態です。絨毛検査を受けた妊娠の約1〜2%に見られるとされています[2]。
Q. なぜCPMがあるとNIPTで高リスクと判定されるのですか?
A. NIPTが分析する「胎児由来」のDNAは、実際には主に胎盤の細胞から放出されたものだからです。胎盤にだけ異常があるCPMでは、赤ちゃんの染色体が正常でも高リスクと判定されることがあります。
Q. NIPTで高リスク判定が出たら、赤ちゃんに染色体異常があると確定しますか?
A. いいえ。NIPTはあくまでスクリーニング検査で、高リスク判定だけで確定するわけではありません。妊娠に関する重要な判断の前に、確定検査を受けることが推奨されます。
Q. CPMが疑われる場合、確定検査は絨毛検査と羊水検査のどちらがよいですか?
A. 羊水検査が推奨されるケースが多くなっています。絨毛検査は胎盤の組織を採取するためCPMの影響を受けることがあり、羊水検査は赤ちゃん由来の細胞を調べるため影響を受けにくいとされています[5]。
Q. 羊水検査はいつから受けられますか?
A. 羊水検査は一般に妊娠15〜16週以降に実施されます。
Q. 確定検査で異常がなければ、もう心配はいりませんか?
A. CPMがあると胎盤の機能に影響が出て、胎児発育不全などにつながるケースがあることが報告されています[2][3]。妊婦健診での超音波検査などを通じて、赤ちゃんの発育を丁寧に見守ることが大切です。
6. 参考文献
[1] Science、1983年
[2] Journal of Medical Genetics、1996年
[3] Journal of Clinical Medicine、2014年
[4] Genetics in Medicine、2018年
[5] American Journal of Medical Genetics Part C: Seminars in Medical Genetics、2016年
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医学博士・医師 広重 佑(ひろしげ たすく)
医学博士、日本泌尿器科学会専門医・指導医、がん治療学会認定医、抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医、日本抗菌化学療法学会認定医、性感染症学会認定医、Certificate of da Vinci system Training As a Console Surgeonほか。
2010年に鹿児島大学医学部を卒業後、泌尿器科医として豊富な臨床経験を持つ。また、臨床業務以外にも学会発表や論文作成、研究費取得など学術活動にも精力的に取り組んでいる。泌尿器科専門医・指導医をはじめ、がん治療、抗加齢医学、感染症治療など幅広い分野で専門資格を取得。これまで培った豊富な医学知識と技術を活かして、患者様一人ひとりに寄り添った医療を提供している。
