妊娠中の「知る」選択:従来の出生前診断と新型出生前診断(NIPT)の徹底比較

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2025.10.23

胎児DNA鑑定

妊娠中の「知る」選択:従来の出生前診断と新型出生前診断(NIPT)の徹底比較

リライティング日 : 2026年 03月 09日

妊娠中の「知る」選択:従来の出生前診断と新型出生前診断(NIPT)の徹底比較

【要約】
妊娠中に受けられる出生前診断には、母体血清マーカー検査・羊水検査・絨毛検査などの従来検査と、採血のみで高精度に染色体異常リスクを調べるNIPT(新型出生前診断)があります。本記事では各検査の精度・時期・費用・侵襲性を比較し、最適な選択をサポートします。

目次

妊娠は喜びと期待に満ちた期間ですが、同時に生まれてくる赤ちゃんの健康についての不安を抱える方も少なくありません。そうした不安に応えるのが出生前診断です。診断技術は日々進歩しており、検査によって得られる情報も、検査方法も多岐にわたります。
本記事では、長年実施されてきた従来の出生前診断(母体血清マーカー検査、羊水検査、絨毛検査)と、近年急速に普及している「新型出生前診断(NIPT)」を、その検査対象や特徴、メリット・デメリットを比較しながら分かりやすく解説します(1)(2)。

 

◆ 従来の出生前診断:スクリーニングと確定診断

従来の出生前診断:スクリーニングと確定診断

従来の出生前診断には、胎児のリスクを推定するスクリーニング検査と、診断を確定する確定診断があります。

1. スクリーニング検査:母体血清マーカー検査

母体血清マーカー検査(クアトロテストなど)は、妊婦さんの血液を採取し、特定のタンパク質やホルモンの濃度を測定して、ダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、開放性神経管欠損症などのリスクを確率として算出する検査です(3)。

特徴 詳細
検査方法 採血のみの非侵襲的検査
検査時期 妊娠15週〜20週頃
精度 NIPTに比べると低い(偽陽性・偽陰性の可能性がある)
費用 比較的安価
結果 疾患のリスクの確率(陽性/陰性ではない)

この検査は、簡便で比較的安価ですが、あくまで「リスクの推定」であり、診断を確定するものではありません。

結果が陽性(高リスク)と出た場合、確定診断の受診が必須となります。


2. 確定診断:絨毛検査と羊水検査

スクリーニング検査で高リスクと判定された場合や、高齢出産など特定の条件を満たす場合に検討されるのが、絨毛検査や羊水検査といった確定診断です。これらは、胎児由来の細胞を直接採取して染色体を分析するため、非常に高い精度で診断を確定できます(4)。

検査名 検査方法 検査時期 検査項目 精度
絨毛検査 腹部または腟から胎盤の一部(絨毛)を採取 妊娠11週〜14週 染色体の数と構造異常 非常に高い
羊水検査 腹部から羊水を採取 妊娠15週〜18週頃 染色体の数と構造異常 非常に高い

これらの検査は、子宮内に針を刺すなどの処置を行うため侵襲的であり、ごくわずかではありますが、流産や破水などのリスクを伴います。そのため、検査の必要性を慎重に検討する必要があります(4)。

◆ 新型出生前診断(NIPT):新しいスクリーニングの形


新型出生前診断(NIPT):新しいスクリーニングの形

NIPT(Non-invasive Prenatal Testing:非侵襲性出生前遺伝学的検査)は、従来のスクリーニング検査と確定診断の間に位置づけられる、新しい検査です(1)。

1. NIPT(新型出生前診断)の基本的な仕組み

NIPTは、妊婦さんの血液中に含まれる胎児由来のDNA断片(cfDNA: cell-free DNA)を分析する検査です。採血のみで行えるため非侵襲的でありながら、従来の母体血清マーカー検査と比べて非常に高い精度で染色体の異数性異常のリスクを調べることができます(2)。

特徴 詳細
検査方法 採血のみの非侵襲的検査
検査時期 妊娠10週頃から
精度 従来のスクリーニング検査より格段に高い
費用 従来の確定診断と同程度、またはそれ以上
結果 疾患のリスク分類(陽性/陰性)

2. NIPTの検査対象:染色体の異数性異常

基本的なNIPTの主な検査対象は、以下の主要な染色体の異数性異常です。

21トリソミー(ダウン症候群)

18トリソミー(エドワーズ症候群)

13トリソミー(パタウ症候群)

これらは、染色体の数が通常より1本多い(トリソミー)ことによって生じる疾患です。NIPTはこれらの疾患に対して99%近い高い検出精度を誇ります(2)。

また、検査機関によっては、上記の主要なトリソミーに加え、性染色体異数性(ターナー症候群、クラインフェルター症候群など)や、その他の常染色体異数性、微小欠失/重複症候群まで検査項目を広げている場合もあります。

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◆ NIPTの進化:単一遺伝疾患リスク検査

NIPTの進化:単一遺伝疾患リスク検査

NIPTの技術は進化しており、最近では従来の染色体異数性異常の検査に加え、単一遺伝疾患のリスク検査を提供している施設もあります(5)。

単一遺伝疾患とは、特定の一つの遺伝子の変異によって引き起こされる遺伝性疾患の総称です。代表的なものに、脊髄性筋萎縮症(SMA)や脆弱X症候群などがあります。

このリスク検査は、胎児のcfDNAを解析することで、これらの重篤な単一遺伝疾患のリスクが高いかどうかを評価します。

検査項目 目的
染色体の異数性異常 21, 18, 13トリソミーなど、染色体の数の異常を調べる
単一遺伝疾患リスク検査 特定の単一遺伝子の変異による重篤な疾患のリスクを調べる

注意点: NIPTによる単一遺伝疾患のリスク検査は、現時点ではすべての単一遺伝疾患を網羅しているわけではなく、また、診断を確定するものでもありません。陽性(高リスク)と出た場合は、確定診断として羊水検査などが必要となります。

◆ 従来の診断とNIPTの比較:知っておきたいポイント

比較項目 母体血清マーカー検査(従来) 絨毛/羊水検査(従来・確定) NIPT(新型出生前診断)
侵襲性 非侵襲的(採血) 侵襲的(流産リスクあり) 非侵襲的(採血)
検査目的 リスク推定(スクリーニング) 診断確定 リスク分類(高精度スクリーニング)
検出精度 低い(偽陽性・偽陰性が多い) 極めて高い 非常に高い
検査時期 妊娠15週以降 絨毛: 11週〜、羊水: 15週〜 妊娠10週以降
検査対象 主に21, 18トリソミー、神経管欠損症 染色体の数と構造異常全般 主に21, 18, 13トリソミー(拡張可能)

どちらを選ぶか?

出生前診断は、どの情報を、いつ、どのようなリスクを負って知りたいかという、ご夫婦の考え方や価値観に深く関わる倫理的な選択です。

  1. まずリスクを知りたい(精度よりも簡便さ・安価を優先):母体血清マーカー検査
  2. なるべく早く、高い精度でリスクを知りたい(非侵襲性を優先):NIPT
  3. 診断を確実に確定したい(流産リスクを受け入れ、診断確定を優先):絨毛検査/羊水検査

NIPTは、従来のスクリーニング検査よりも早期に、より高い精度で主要な染色体異常のリスクを知ることを可能にしました。しかし、NIPTの結果が陽性であったとしても、診断を確定するには侵襲的な羊水検査や絨毛検査が必要であるという点は変わりません。

単一遺伝疾患のリスク検査については、提供されているサービスや検査項目が施設によって大きく異なるため、事前に遺伝カウンセリングを受け、検査の限界や、結果が陽性だった場合の次のステップについて十分に理解しておくことが重要です。

◆ まとめ:情報とカウンセリングの重要性

まとめ:情報とカウンセリングの重要性

出生前診断の選択は、ご夫婦にとって大きな決断です。どの検査を選ぶにしても、それぞれの検査のメリット、デメリット、精度、限界を正しく理解し、結果について十分に検討する時間を持つことが不可欠です。

特に、遺伝的な問題に関する検査であるため、専門的な知識を持った医師や認定遺伝カウンセラーによる丁寧なカウンセリングを受けることを強く推奨します。正しい情報を得て、納得のいく選択をすることが、安心感のあるマタニティライフにつながります。

よくある質問(FAQ)

Q1. NIPTと羊水検査はどちらを先に受けるべきですか?

A. 一般的にはNIPTを先に受け、陽性(高リスク)と出た場合に確定診断として羊水検査を受ける流れが推奨されます。NIPTは非侵襲的で流産リスクがないため、初めに受けるスクリーニング検査として適しています。

Q2. NIPTはいつから受けられますか?

A. NIPTは妊娠10週頃から受検可能です。母体血清マーカー検査(15週以降)や羊水検査(15週以降)と比較して、より早い時期に結果を得ることができます。

Q3. NIPTで分かる疾患は何ですか?

A. 基本的なNIPTでは、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パタウ症候群)の3つの主要な染色体異数性異常が分かります。検査機関によっては性染色体異常や微小欠失症候群、単一遺伝疾患まで対象を拡大しています。

Q4. NIPTの精度はどのくらいですか?

A. 主要なトリソミーに対するNIPTの検出精度は99%近くと非常に高いですが、あくまでスクリーニング検査であり確定診断ではありません。陽性結果の場合は羊水検査などの確定診断が必要です。

Q5. 出生前診断を受ける前に何を準備すべきですか?

A. 専門医や認定遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリングを受け、検査のメリット・デメリット・限界、結果が陽性だった場合の次のステップについて十分に理解しておくことが重要です。

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参考文献

(1) Screening for Fetal Chromosomal Abnormalities
『ACOG Practice Bulletin, 2020年10月』

(2) Cell-free DNA Analysis for Noninvasive Examination of Trisomy
『The New England Journal of Medicine, 2015年4月』

(3) Maternal Serum Screening for Down Syndrome
『Ultrasound in Obstetrics & Gynecology, 2016年』

(4) Amniocentesis and Chorionic Villus Sampling for Prenatal Diagnosis
『Cochrane Database of Systematic Reviews, 2017年』

(5) Noninvasive Prenatal Testing for Single-Gene Disorders
『Nature Medicine, 2022年』

著者情報

著者:seeDNA 遺伝医療研究チーム
株式会社seeDNAにて新型出生前検査と遺伝子検査を行う専門家チームです。2016年には特許技術である微量DNA解析を用いた日本国内初の出生前DNA鑑定を開発しました。海外ロイヤリティフリーの新型出生前検査と次世代DNA鑑定の開発に成功した、日本国内初の検査機関です。